三日月の下、君に恋した
 今度は美也子が黙りこむ。菜生の顔を、のぞきこむようにジロジロ見る。

「うそお。えーっ。いつのまにできたんですか?」


「声、大きいよ美也ちゃん」

「だってだって。知らなかった。誰ですか?」


 マズイ。美也子の好奇心に余計な火をつけた。


「……美也ちゃんの知らない人だよ」

「学生時代の友達とか?」

「ん、まあ……」


「あ。あーっ、わかった! この前の朝帰りのときの人でしょ? 仕事帰りにばったり会って盛り上がったって……そうでしょ? ねえそうでしょ?」

「だから声大きいって!」


「なあんだ。そっかあ。そうなんだあ」

 美也子はひとりで納得してうなずいている。やけにうれしそう。

「あたし、心配してたんですよ。あのとき菜生さんちょっと変だったし、あれからときどき考えこんでるみたいだし」

「……それは」

「でもよかったあ。心配して損しちゃった。菜生さんにもそういう人できたんですねえ。今度、紹介してくださいね」
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