私の好きなあなたが幸せでありますように
待ち合わせよりいくらか早く駅についた。
今日は間違えなかった。
改札口。北口。映画館方面。何回も確認する。よし、合ってる。
陸くんはまだ来ていない。私が早すぎたのだ。
待つのは嫌いじゃない。いくらでも待てる気がする。それくらい、誘われたことがうれしかった。

携帯電話を確認する。

『ごめん、少し遅れる。ホントごめん』

陸くんからメールが来ていた。
きっと電車のいいつなぎがなかったのだろう。
それくらいのこと、私は気にしないのに。律義にメールをくれたことが、単純にうれしかった。

『大丈夫だよ。ゆっくり来ていいからね』

そうメールを返した。来てくれさえすればそれでいい。彼に会いさえすればこの気持ちが何なのか、分かる気がするから。
そんな根拠のない自信が私を突き動かしていた。
男の子と遊ぶ。といっても、たった一回誘われたくらいで舞い上がってはいけない。これは今までの経験でそう思うことにしていた。
陸くんも例外ではないだろう。
一回遊んで、さようならっていうパターンだってよくある。きっと一度目はお試しなのだ。
そして私には彼の気持ちも分からない。本当にただ単純に、映画が見たくて、その相手にたまたま私が選ばれただけなのかもしれないし。
それならそれでかまわなかった。それでも、彼に会えるのなら。だって、携帯電話越しじゃなく、直に会って、顔が見られて、声が聞けるのだから。
それだけで満たされるなんて、私は案外単純にできているのかもしれない。
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