私の好きなあなたが幸せでありますように
それにしても、とこの手の話題が出るたび思う。

どうして、他人に条件を突き付けることができるのだろう?

好みのタイプとか、こんな人と付き合いたいとか、私には理解できなかった。

私自身が誰かに値踏みされているような気になって、怖いとさえ感じていた。
私は他人に条件を突きつけられるほどできた人間じゃない。
だから、同じように条件を突き付けられたって困るだけだ。

それなら恋愛って一体何なのだろう?

今まで特定の誰かと付き合ったことのなかった私には未知数の存在で、それは私の中でいつも素朴な疑問の一つとして転がっていた。

深く考えていたわけじゃない。

多分たくさんある疑問の中の一つくらいにしか意識していなかった。

だけど私は不思議に思う。

世の中には彼氏が欲しい人と彼女が欲しい人が沢山あふれているのに、恋人になれるのはほんの一握り。
それは一体、なぜなのだろうと。

彼氏・彼女と友達の境界線の曖昧さも私を混乱させた。
多分分からなくても、不便はないのだろう。
それでも恋は成立しているのだから。

付き合っていた覚えのない人から振られる形になったり、好きになった人には振り向いてもらえなかったり、どうとも思っていなかった人から告白されて断った後味の悪さを味わったり。

そんなことを幾度となく繰り返し、傷つき傷つけ、ぐるぐるぐるぐる私の世界は回っている。

そんな自分の恋愛に私はほとほとくたびれていた。

他人の恋話もそう。
実際はドロドロしているものが多い。
えげつないものもたくさんある。

どうして小説の中や漫画の中では恋愛はきらきら輝いているのに、現実で手に取った途端こんなにも醜くなっていくのだろう?

そんなこんなで私は恋愛をしなくなっていった。

私は話を聞くだけで、本や映画の中だけで、十分楽しめる。
現実は私に向いてないからと逃げていたのかもしれない。
もうこれ以上傷つきたくない。

そうやって殻にこもったのはいつからだったろう?

それさえも、忘れてしまったとき、私は陸に出会ったのだ。
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