私の好きなあなたが幸せでありますように
もういい。
少し諦めモード。
ちょっとだけ、ほんの少しだけ気になっただけだ。
だからもう少し話してみたくて、できればもう一度会ってみたくて、メールしてみただけなんだから。
自分を慰める。
なんか、悲しい。

人を好きになるって、いったい何がきっかけになるんだろう?

ふと、そんなことを考えた。

見た目?

性格?

全体的な雰囲気?

一体決め手は何だろう?

分からない。
分からないからもやもやする。
胸のあたりがきゅっって苦しくなる。
こんなことって、今まで一度でもあったっけ?
分からないのか、忘れてしまった感情なのか、私の脳内検索には引っかからない。

今までは、と思い返してみる。

今までのパターンは、何となく好きになっていたのだ。
一緒にいる時間をたくさん共有して、言葉をいくつも交わして、一緒にいるのが当たり前になった頃、やっとその人を好きなのかもしれないと思い始める。
単に好きなら友達のままでいいじゃないとも思う。
そしてまたよく分からないぐるぐるした感情に悩まされるのだ。

今回はそれがない。

ただ、もう一度会えばこの感情に名前が付けられる気がした。

陸くんに、もう一度会ってみたい。

それが素直な気持ちだった。

携帯電話を放り投げた方から、突然チャラリンっと間の抜けた音がした。特定の友人からのメール以外は初期設定の着信音のままだった。
つまりこの音は友達からのメールではない。

が、私は飛びつく。

携帯電話に。

それはもう、今までゴロゴロしていたとは思えないほどの勢いで。


『返信、遅くなってごめんね。うん、いいよ。陸くんとか下の名前で呼ばれるの新鮮(笑)俺も莉奈ちゃんって呼んでいい?』

待ち望んでいた返信だった。
文面を読み返して一人で笑いそうになる。
さっきまでうじうじしていたとは思えない。
なんて現金な奴だ。
普段、陸くんは名字っで呼ばれることの方が多いのかな?
もしそうだとしたら、私と同じだ。
私も莉奈って呼ばれるよりも名字で呼ばれる方が多かったから。
まぁ高校に上がってからは半々くらいの割合で莉奈って呼ばれるようになったけど。
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