存在認定恋愛論
□まだ、君は笑う
・葛side
・葛side
ちょうど1月の始めごろ
その日は入試の日だった。
続々と受験生が来るのを、俺は
図書室の一角にある椅子に座って
見下ろしていた
白い雪がちらほらと降る
タバコの煙が雪と混じりながら
消えていくのを見ていた俺は
ギシリと聞こえた音に
慌てて振り返った。
校内は禁煙
万が一にも教師に見つかれば
色々と注意を受けるのは
目に見えている。
面倒なことは避けたい
しかし、慌てた俺の見立てとは違い
そこにいたのは
無表情…ではなく、驚きと
焦りを滲ませた表情を浮かべる
九条 なぎさ
「どうした?…受験生だよな」
「は、はい!」
初々しい受験生のなぎさは
俺よりも慌てて腕時計を見た。
俺もつられて
掛け時計に目をチラリと向ければ
…ああ、受験開始5分前か
「…どうしよっ…」
小さく、
本当に小さく泣きそうな声がした
受験生の彼女は
うつむいて肩を震わせていた。