存在認定恋愛論
何故か姉の九条に敬語。
今思えば、既に九条の前では
…無表情だったな
俺は悲しそうに笑う九条を
視界で捉えながら、
なぎさの頭を撫でてやる。
驚いたように顔を上げた
…表情は浮かんでいないけれど
「先生、先ほどは
ありがとうございました。」
泣きそうだった声でさえ
今は木枯らしのように抑揚の無い
…無感情の声色。
「…いや、間に合ってよかった」
無感情の彼女に、
どぎまぎしながらも口元を緩める
よく見れば…似てるようで
やはりどこか違っていた
「次もあるので、
そろそろ失礼します」
パッと頭をさげて
なぎさは試験会場に戻って行く。
その背中が見えなくなるまで
俺と九条は立ち尽くしていた。
「…驚きました、よね」
九条がそう切り出す
俺はまだ、あの無感情な声が
耳の奥で反響している気分だった
『…どうしよっ…』
『先生、先ほどは
ありがとうございました。』