存在認定恋愛論
「そうか…」
冷静を装う。
なぎさのセーラー服のスカートが
ひらひらと揺れた
「…あの、あげはは?」
九条の名前を出したなぎさは
声に抑揚が無くなる
姉の名前だけで、
さっきまでの感情が消える。
…なんで、そこまで
感情が消えるのかが分からない
「あぁ…帰ったぞ」
「そうですか」
目を伏せ、
少しの安堵感を醸し出すなぎさ
…俺はタバコを口にくわえ直して
そっと近づく。
ゆっくり手を伸ばして
頭を撫でてやった。
ふわりと柔らかな黒髪に、ずっと
触れていたくなる
「せ、んせい?」
「…お前はどうしてそんなに
姉に萎縮するんだ?」
お前の不安を聞いてやりたい。
たった1日で
俺にそう思わせたのは…他でもない
なぎさの、素直な感情だ
「私は…“さなぎ”だから」
さなぎ…?
「あげはは“蝶”
私は“さなぎ”」
なぎさを並び替えると“さなぎ”
あげはは“あげは蝶”
「私はあげはを引き立てる役目」