存在認定恋愛論
…なぎさの声が震えていた。
このままだと
崩れていってしまいそうな彼女を
思い切り…抱き締めた。
「せ、ん」
「お前は、お前でいいんだ。」
姉に劣等感を抱く必要もなければ
自分を卑下する必要もない
誰よりも、俺の心を動かしたのは
…九条 なぎさなのだから
そんなことを年甲斐もなく
言えるはずなく
俺はただ小さな体を抱き締める
近くで見えるなぎさの黒い瞳に
…涙が浮かぶ
「なぎ、」
「先生は…
私を認めてくれるんですか?」
不安そうななぎさに
俺は優しさを心がけて、笑う
「お前はお前だ」
耐えきれなかった涙が
なぎさの白磁の頬を伝った。
「先生…ありがとうございます」
キラリと煌めいた涙が
とても印象的だった。
それから2日後…
教員に配られた合格者の中に
九条 なぎさの名前を見つけて
笑みを溢す。
それと同時に、九条 なぎさが
事故にあったことを…知った。