存在認定恋愛論
□忘れさせて、忘れたくない

・葛side




・葛side

ハッとして掛け時計を見れば
針は9時を指していた。


…物思いに耽りすぎたな


タバコの火を消してから
図書室の鍵を閉める。



鍵を職員室に返す為に暗い廊下を
ひたすらに歩いていると
職員室に明かりが付いている事に
気がついた

「…西澤先生」
「あら、宮本先生。」

職員室でプリントの山を
片付けていたのは、
九条に新入生代表を頼んでいた
西澤 香代先生だった。


さっきまで、懐かしいことを
思い出していたせいか

西澤先生の存在にどぎまぎした

「まだ、残っていらしたのですか」
「西澤先生こそ…」


鍵を棚に返しながら
未だにプリントを片付けている
西澤先生をチラリと見た


「生徒に渡すプリントが
 片付いてなくて…」

ふぅ、と
疲れたようなため息を吐く先生は
どうやらまだ帰らないらしい


「じゃあ、お先に」
「えぇ…

 タバコも控えめにね」


西澤先生の当たり障りのない忠告に
ドキリとした。



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