存在認定恋愛論
ニヤリと口角を吊り上げた彼女に
たしなめられて俺は、
職員室を出てから頭を掻いた。
「…バレてたか」
前から人の秘密に何故か敏感な
西澤先生はなぎさが入学前に
事故にあったことを
俺にこっそりと教えてくれた。
『新入生の九条双子が…
事故にあったわ』
心底驚いた
そして、胸を握り潰されるような
痛みに襲われていた
「…らしく、なかったかもな」
『っ!』
職員室を飛び出そうとした俺を
宥めるように西澤先生は
肩を掴んだ
『ちょ、落ち着きなさい!
…命に別状はないわ』
今思えば、一生徒の事故報告に
あり得ないほどの取り乱し方だ。
先生は俺があの日
図書室でなぎさと会っていたのを
図書室の前を通ったときに
知ったらしい。
『…九条 あげはは左足骨折
九条 なぎさは軽い脳震盪』
『……そ、ですか』
軽症の事実に頭が冷える
ただ、西澤先生は気まずそうに
口を開いた。