存在認定恋愛論
私自身に何かを求める人は、
…初めてだった。
「お前以外に誰がいるんだ。
…手伝え、なぎさ」
宮本先生が私の頭を
プリントでポスッと叩く。
…タバコの香りが強くなった…
「…はい」
顔に感情なんて出ないし
態度にも出ることはないけれど
純粋に、嬉しく思う。
先生は“さなぎ”を見てない。
それだけで…十分
「先生、どうして私を“なぎさ”と
呼んだんですか」
プリントを拾いながら
何となく先生に聞いてみた。
先生はプリントを拾う手を止めて
私を見つめる
今度は 私の目を…しっかりと
「お前は、九条 なぎさだろ。」
「はい」
私は九条 なぎさ
でも、
「周囲は、
私を“さなぎ”と呼びます」
美しい“蝶”と汚い“さなぎ”
私は…“さなぎ”
“蝶”の美しさを際立たせる為に
生まれた存在
「周りの下らない戯れ言を
聞き入れるほど、
俺は馬鹿でも愚かでもない」
「……」
先生は私から目を離さない。