オールホワイト
「珍しいね、白が図書館に居るなんて。」


雪はそう言って爽やかに笑う。
その笑顔に、彼女は惹かれたのだろうか。


「いや、読書感想文、まだ提出してなかったから。」


「ああ、夏目漱石の?俺の部屋に本あるから、貸してあげるよ。」


「そ、そっか。じゃ、借りるわ。」


俺は頬をかいて、アハハと笑った。
いたたまれなくなって、この場から立ち去りたいとも思った。


…だけど。


「白海さん、探してた本あった?」


「うん、あったよ。でも上の方にあって、取れないから、脚立を探してるんだけど…。」


「どこ?取ってあげるよ。」


あれ…?二人は仲良しなのか?
て、事は…チョコをもらった事を、雪が知らないんだったら、マズくないか?


俺のなかに、妙な焦りみたいなものが出てきた。
< 5 / 15 >

この作品をシェア

pagetop