空夢
それから5分間、何を言っても知りたがる松野空に観念し、話した。
「歌…歌ってたの」
「…歌?」
松野空が聞き返す。
あたしが歌ってたなんて言ったらどう思うだろ…。
似合わない…とか思うかな。
「…そう、歌。 あたし、歌うことが好きなんだ」
「へぇー。 俺も好き。 今度一緒に歌おな!」
「え…」
あたしは驚いた。
松野空が “歌を歌うのが好き” と言ったほうではなく、 “今度一緒に歌おな” そう言ったほうだ。
そう言ってくれるとは思わなかった。
いつも、 “似合わない” だとか “意外” だとか言われてきた。
けど、 “一緒に歌おな” 松野空はそう言ってくれた。
その一言が嬉しかった。