空夢
戸を開けると、ザワザワした教室が目に入る。
あたしの席は、窓側の一番後ろだ。
あたしの一番好きな場所。
みんなが騒いでいるので、自分の席に辿り着くまでに何度もぶつかりそうになる。
あたしはそれをギリギリよけて、やっと席に辿り着いた。
「ねぇ…宮野さん」
あたしは名前を呼ばれ、顔を上げる。
そこには長い髪を上で1つに束ねた女の人が立っていた。
たぶん、あたしの斜め前の席の人だろう…。
「……何?」
あたしは冷たく返す。
だが、何も表情を変えない。
「…宮野さん…椎名 織斗 (シイナ オリト) って…知ってる?」
ドクンッ────…