空夢





戸を開けると、ザワザワした教室が目に入る。



あたしの席は、窓側の一番後ろだ。



あたしの一番好きな場所。



みんなが騒いでいるので、自分の席に辿り着くまでに何度もぶつかりそうになる。



あたしはそれをギリギリよけて、やっと席に辿り着いた。




「ねぇ…宮野さん」




あたしは名前を呼ばれ、顔を上げる。



そこには長い髪を上で1つに束ねた女の人が立っていた。



たぶん、あたしの斜め前の席の人だろう…。




「……何?」



あたしは冷たく返す。



だが、何も表情を変えない。




「…宮野さん…椎名 織斗 (シイナ オリト) って…知ってる?」




ドクンッ────…










< 37 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop