空夢
そんなある日──。
あたしは椎名織斗に呼び出された。
心地よい風が2人を包み込む。
『俺、宮野の事好きなんやけど…。付き合ってくれん?』
椎名織斗の言葉に、戸惑いを隠せなかった。
初めてされた告白だった。
地味なあたしに、告白するなんて嘘だと思った。
初めは断ろうと思った。
だけど初めてだったからか、好きだったからか、断れなかったあたしは
『え…あ…うん』
と不器用に返した。
『よっしゃ! じゃあ、よろしくな。青』
『あ…よろしく。椎名くん』
椎名織斗は、笑顔で教室に戻っていった。
初めて出来た彼氏に浮かれていて、あたしは先のことなんか考えてなかったんだ。
──あの時、断っておけばよかったんだ。
そうすれば辛い思いも、苦しい思いもせずに済んだのに……。