空夢
椎名織斗と付き合ってから3週間が経ったころ。
誰にも言ってないのに、付き合っている事が広まっていた。
あたしは毎日教室の前で、何か言われるんじゃないか、何かされるんじゃないかと脅えていた。
だけど、教室に入ってみると皆 “おめでとー” と言ってくれた。
その言葉に驚くばかりだった。
“受け入れてくれてるんや” 本気でそう思った。
“皆と仲良くなれるかも” そう思うと嬉しかった。
あたしの生活は充実していた。
友だちもできて、彼氏もできた。
今までで、一番なんじゃないかってほどだった……。
だけど
この時あたしは気づけばよかったんだ。
あたしの人生の歯車が、変な音を立てながら狂い始めていたことに──。