空夢
『はぁ…はぁ…』
あたしは無意識のうちに、その場から走り出していた。
不意にしょっぱい水が頬を濡らした。
あたしはその場に立ち尽くし、さっきの椎名織斗の言葉を思い出す。
『織斗さ、何で宮野イジメようって言ったん?』
『…あぁ、だって………ウザかったから』
“ウザかったから”
その一言が、胸に刺さった。
信じてたのに、裏切られた。
この日からあたしは、人を信じられなくなった。
椎名織斗は、初めて好きになった人で、初めて大嫌いになった人だった。