空夢
「んー仕方ないなぁ。 じゃあ、今は苗字でいいから、いつか名前で呼んでな!」
「……いつかは…ね」
そう言ってあたしは、駅に向かって歩き出す。
その後を松野空…松野がついてくる。
誰かと一緒に外に出るなんて久しぶりで、本当は少し嬉しかった。
少しだけ……ね。
けど、その事は松野には言わない。
きっと、調子に乗るだろうから。
そう思いながら、駅までの道のりを歩む。
駄菓子屋の角を曲がったところで、誰かとぶつかる。
その勢いで尻餅をつく。
「…ったー」
「すいません! 大丈夫ですか?」
「あ、はい」
「そうですか、よかった」
あたしは立ち上がり、謝ろうと顔を上げる。
「……え…」
あたしはその場から動けなくなった。
そこに立っていたのは──……。