空夢
逃げない
カサッ――
紙みたいなものが刷れる音がした。
その音に顔を上げる。
そこには、ヒマワリの花束を抱えた松野が立っていた。
「宮野……」
「まつ…の…」
走って追いかけてきたのだろう。
息が乱れているし、服装もグチャグチャだ。
松野は花束を抱えたまま、あたしを優しく包み込んだ。
「ごめんな…」
なんで…?
なんで松野が謝るの?
「俺が、無理やり買い物になんか付き合わせたからこんな事…っ」
松野は悔しそうな顔をする。
違う……違う…。
あたしがこんなになってるのは、まだあたしが弱いから。
過去に縛られて抜け出せなくて…。
言葉にしたいのに出来ない。
結局あたしは、強くなんかなれてないんだ…。