空夢
「……ごめんな…俺…」
弱弱しい椎名織斗の姿。
もしかしたら、中学の頃のあたしだったら許していたかもしれない。
だけど今はもう許せない。
…………許さない。
あたしの心をズタズタにした。
あたしから何もかも奪った。
友達も笑顔も感情も……全部。
辛くて苦しくて悲しくて、1日中泣いた日だってある。
あたしは携帯を握り締める。
その拍子にスピーカーを押してしまった。
あたしは怒りでその事には気付いていない。
「ごめん、俺…青の気持ち考えんと、遊びであんな事して……。自分されてから気付くとかアホよな…」
「………は…?」
自分されてから……?
どーゆう事……。
「俺、最近いじめでもないけど、嫌がらせ受けてんねん。ホンマありきたりなやつ」
ハハッと笑って言う。
なんで……?
なんで笑えるん……。
辛いんやろ?
苦しいんやろ?
泣きたかったら泣けばいいやん。
あたしから怒りが消えていく。
まるで、あの頃の自分を見ているようだった。