空夢
そこには、髪を掴む男子と髪を掴まれる女子の姿があった。
どこからどうみても
「…イジメ……」
小さく呟いた。
見たくない…。
やめて。
そう思っていても何も出来ず、ただ立ち尽くすだけ。
しだいに体が震えてくる。
「松野……っ」
あたしは鞄を放って走り出す。
どこ…どこ……っ。
息が切れだす。
少しの間立ち止まり、酸素を多く吸う。
そしてまた走り出す。
3階に上ったところで、松野の姿を見つけた。
先輩らしき人とじゃれあっている。
「…松野!」
あたしが大きな声で呼ぶと、こっちを向く。
そしてひらひらと手を振りながら
「宮野、会いにきてくれたん?」
なんて冗談を言っている。
そんな冗談聞いてる暇はない。
あたしは松野の鞄を掴み、連れて行こうとする。