空夢
「……宮野?」
「…っ松野…早く」
焦っているからか声が出にくい。
早く…早く!
あたしは松野の鞄を掴みながら、足を速める。
「…宮野?」
松野の声が低くなる。
状況を把握してきたのか、さっきの冗談っぽい喋り方はなくなった。
「早く…早くしないと……また…」
あたしみたいに…。
頭の中が真っ白になってくる。
無我夢中で廊下を歩き、階段を下りる。
松野の声など聞こえていない。
「宮野!」
その声にビクッと肩を跳ね上がらせる。
「どうしたん?」
真剣な声。
説明するより、実際見るほうが早い。
そう思って、また足を進めた。
そして階段を下りきり、教室に向かう。