空夢
さっきと変わらず人が多い。
いや、さっきより多いかもしれない。
あたしはまず、放った鞄を取りに行く。
そして2つの鞄を右手に提げ、松野を見る。
「どうしたん?」
「……あれ…」
あたしは顔を教室に向ける。
女の子はまだ、髪を掴まれている。
周りはというと、面白がっている男子。
少し引いている女子。
男子の中に、少し派手な女子も数人笑いながら混ざっている。
松野は目を見開いて立ち尽くしている。
「…んなよ…これ」
松野から聞こえたかすかな声。
その声を聞き取ったと同時に、松野が教室に入っていった。
「ちょっ…」
止める間もなかった。
あたしも松野の後を追って教室に入る。