空夢
その言葉を言われて、かすかに頬が緩んだ。
素直に嬉しかった。
「…っにすんだよ!」
その声にあたしと女の子が反応する。
そして声の主を見る。
あたしの目の前にいる子の髪を掴んでいた人だ。
その人は松野の胸倉を掴んでいる。
「松野!」
あたしは叫びながら、松野に近づこうとする。
だがあたしの足は、松野のサインによってとめられた。
相手を見たまま、あたしに左の掌を見せている。
あたしはその場に立ち止まる。
教室の入り口には、さっきより多くの人が集まっている。
ザワザワとざわつき、一部の人は面白がっている。
あたしはそんな人たちを睨み、すぐに視線を松野に戻した。
「いい加減にしろよ」
「えぇ加減にすんのはアンタやろ」
「はぁ?」
松野は胸倉を掴んでいた手を振り払う。
そして相手を睨んだ。
「今あの子に何してた?」
「あ?…あぁ、あれね。遊んでただけじゃん。ただのあ・そ・び」
いちいち区切って言うのが、腹立たしい。
あたしの中で何かが切れそうになる。