空夢
「あんな事して、傷つくん誰やと思てんの?」
「んなの知るかよ。俺らは楽しいからいーの」
ブチッ
あたしの中で何かが切れる音がした。
あたしは松野の前にいる男の前に立つ。
そして右手を上に上げ、思い切り相手の頬に振り下ろした。
「って!」
相手は短く声を上げる。
「さいてー!あんな事される人の気持ちも考えろ!」
さっきの子は、ポカンと口をあけている。
自分でもどうしてこんな事をしたのかわからない。
だけどさっきの光景が、中学の頃のあたしと重なった。
だからかもしれない。
辛い思いしてほしくない。
そう思ったから、今こんな事をしているのかも。
涙が溢れてくる。
あたしが泣く必要なんかないのに。
だけど、今泣くわけにもいかず、ぐっと堪える。
「てめぇ、調子に乗るなよ!」
相手の拳があたしに向かってくる。
ヤバイ!
そう思って目を瞑る。
「青ちゃん!」
あたしの名前を呼ぶ声。
そしてあたしの前に、さっきの子が立つ。
「危な…」
突然のことにかばうこともできない。
っ…。
思い切り目を閉じたが、いつになっても何も起こらない。
さっきの子も少しずつ顔をあげる。