Secret Story ♯アクアマリンreverse♯【特別編】

そもそも、なぜ瀬名さまがわたくしを学校へ送り迎えしてくださるのかというと……それはわたくしが小学6年生の時ですの。


友達と少しだけ道草をして帰った放課後。


いつものようにオレンジ色の太陽に背中を向けて歩いていました。

すると……中年の男性がわたくしと友達に道に迷ったので教えてほしいとおっしゃられたのです。



わたくしと友達は疑いもせずに男性に道案内をしましたわ。

それが淑女としての礼儀というものですもの。


わたくしの家からの方がそこは近くにありましたので、わたくしは友達と別れて男性を案内しました。



ふたりきりで…………。



今思えば、それはとても危ないことでした。




ふいに、わたくしの手は男性に勢いよく引っ張られましたの。


まあ、わたくしは生まれながらの美少女ですものね。

連れ去りたいと思われるのは仕方ありませんわ。



ですが、それとこれとは別です。


腕を引っ張る男性に足や腕をバタつかせて抵抗いたしました。

けれど、やはりとも言うべきでしょう。

見目麗しい華奢なわたくしです。

当然、大人で、なおかつ男性の力にかなうわけがありませんわ。


身体は引きずられていきます。


わたくしは……怖くなって叫び声をあげました。


その時ですわ。


彼が……紺野 瀬名さまが来てくださったのです。



瀬名は、中学校から帰宅途中で、いつもとは違う道をたまたま歩いていたそうです。

彼は男性とわたくしの恐ろしい場面に遭遇されたのです。



けれど男性はそんなことをおかまいなしでしたわ。

わたくしの身体を持ち上げてどこかへ連れ去ろうとしました。




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