Secret Story ♯アクアマリンreverse♯【特別編】

もちろん、その間もわたくしは大人しくなんてすることはありませんでした。

両手を上下に動かしたり、足をバタバタさせてもがきましたわ。


ですが、やはりそこは子供の力。

大人にはかないません。



けれど、わたくしは力に脅えるような女ではありませんの。

男性の腕を並びの整った美しい歯でガブリと噛んでやりましたわ。



すると、男性はあまりの痛みに怯(ひる)まれ、わたくしを戒める強い腕はゆるみます。


トンっと地面に足をつけたわたくしは瀬名さまへと走り、移動しました。


瀬名さまは、わたくしを背中に庇ってくださると、男性と対峙されました。



自分の思い通りにならなかった男性の怒りは、それはとても恐ろしいものでしたわ。



わたくしは身体を小さくして大きな瀬名さまの背中に隠れていました。

15歳になった今でもよく覚えておりますわ。



ですが、そんな男性にも瀬名さまは脅えることはありませんでした。



瀬名さまは当時はまだ空手はされておりませんでしたが、武道がとても得意だったそうで、お強かったのですわ。




気がつけば、わたくしの目の前で男性がのびていました。



それからですの。



瀬名さまは空手を習いはじめ、登下校もご一緒していただけるようになったのは……。



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