Secret Story ♯アクアマリンreverse♯【特別編】
彼、安藤 龍一もマリちゃんも。
今はいませんが空ちゃんも、わたくしが昔、攫(さら)われそうになったことをご存知なのですわ。
瀬名さまが心配されて、わたくしをひとりにしないでと、ひと言おっしゃってくださいましたの。
ですが、瀬名さまも過保護ですわ。
わたくしはもう、昔のような幼い考えを持った子供ではありません。
立派な淑女(しゅくじょ)ですもの。
あのような失態はもういたしませんのに……。
まあ、わたくしもわたくしですわね。
だって、瀬名さまと一緒に居たいがために、そのようなお優しいお気遣いに寄りかかってしまっているのですもの。
ですが……さすがに今日は無理そうですわ。
一緒には帰れそうにないのですわ。
だって、さっきまであんなにオレンジ色に輝いていた太陽も、今は少しずつ傾いていますもの。
「……できましたわ」
……コトリ。
わたくしはシャープペンを静かに机の上へと置きました。
「俺もできた」
「では、先生に提出してまいりますわ」
「いってらっしゃい」
安藤 龍一もわたくしとほぼ同時に文を書き終えたようで、マリちゃんに見送られ、1階にある職員室へと向かいました。