Secret Story ♯アクアマリンreverse♯【特別編】
「あれ?
ね、姫ちゃん。
あの人って……」
上靴から下靴へとはき替えた直後でした。
マリちゃんは正門を示しています。
わたくしはあまりの気落ちのため地面を見続けていたので、はじめはマリちゃんが何を言っているのかわかりませんでした。
………………?
不思議に思って、マリちゃんの示した指の先へと視線をおきます。
すると…………。
「まあ!!」
思わず歓喜の声をあげたのは、言うまでもなく、このわたくし。
だって……正門の先には、彼がいましたの。
茶色の髪に優しい雰囲気をした美青年な彼、わたくしの王子様、紺野 瀬名さま!!
わたくしは嬉しくなって、一目散に駆け出します。
「うわ~。
なんか、もうアイツの行動であなたが好きですオーラでまくりじゃん。
絶対気づかれてるよな……脈ナシじゃん」
背後で何やらよろしくないことが耳に入ってまいりましたが、今は無視!!
「瀬名さま!!
今日はいかがされたのですか?」
「わたしも今、丁度家に帰るところだったから姫ちゃんも、もしかしたらまだ学校にいるかと思ってね」
にっこり微笑むわたくしの王子様。
ああ、彼こそ癒しですわ!!
この微笑みは嫌なことをすべて包み込むような威力です。
居残りを言いつけた先生さえ神様のように思えてくるのですから。
「姫ちゃん?」
空を見上げてガッツポーズをとっていたわたくしに、瀬名さまは眉根を寄せて尋ねてこられました。
あ、しまったのですわ。
思わず違う世界に行ってしまいました。