Secret Story ♯アクアマリンreverse♯【特別編】
「あ、なんでもありませんわ」
「なんでもないっていうか……きも……っぐ」
彼が言いたかったことをすぐに理解できたわたくしは、隣にやって来た安藤 龍一の言葉を阻止すべく、正義の鉄槌が彼のみぞおちへと、それはそれは見事にクリーンヒットいたしました。
「姫ちゃん?」
瀬名さまは、そんなわたくしと安藤 龍一のやり取りを不思議にお思いになられたのでしょう。
わたくしに尋ねてまいりました。
まあ、それもそうでしょう。
わたくしの隣にやって来ると同時に安藤 龍一がお腹を抱えてうずくまっているのですもの。
ですが…………ここは何もなかったことにするのがレディーの身だしなみというものですわ。
「なんでもございませんわ。
彼、お腹をこわしたみたいで」
口元を手のひらで隠し、微笑みます。
「さ、参りましょう」
わたくしの正義の鉄槌を受け、うずくまる安藤 龍一に寄り添うマリちゃんをよそに、わたくしは瀬名さまの背中をグイグイ押しました。
マリちゃんは、小さく手を振っています。
わたくしも瀬名さまを押しながら、小さく手を振り、『マリちゃん』にさようならをいたしました。
あくまでマリちゃんだけですわよ?
デリカシーの『デ』の字も知らない安藤 龍一なんて知ったこっちゃありません!!
「あ、父さんと母さんに話したんだけどね。
やっぱり、姫ちゃんひとりで留守番は危ないと思うんだ。
わたしの家においで」
……へ?
思ってもみないことが耳に入り、硬直しました。