Secret Story ♯アクアマリンreverse♯【特別編】
「姫ちゃん?」
ああ、どうして彼はわたくしの意識を乗っ取ってしまわれるのでしょうか。
目を閉じたわたくしを不思議に思われたのでしょう。
瀬名さまは心配そうにお尋ねになられました。
きっと、どうやっても瀬名さまをわたくしの意識から遠のけることは難しいことですのね。
わたくしは苦笑気味に閉じた瞼をあけ、観念して瀬名さまを瞳に映しました。
すると同時に瀬名さまの息を飲む音がわたくしの耳に入って来ました。
それに……目を大きく開けて、わたくしを見つめられてます。
どうして?
なぜ?
瀬名さまの今の表情は、けっしてわたくしのことをどうとも思っていないというものではありません。
むしろその逆。
わたくしを好いてくださっているような……そんな気持ちにさせるのですわ。
「瀬名さ……「さ、部屋に戻ろう。いつまでもここにいても仕方ないしね」」
瀬名さまに何かを言おうとしたわたくしの言葉を、彼は止められ、背中を向けて二階にあるご自分の部屋へと向かわれます。
何を言おうとしたのかもわからず、けれども、また。
瀬名さまはわたくしとの距離をおかれました。
わたくしの時はそうはさせていただけませんでしたのに……。
瀬名さまは酷い方です。
しばらく呆然として去っていく瀬名さまを見つめながら、苦しみだす胸を押さえるわたくしも……ゆっくりと自分の部屋に向かいました。
私服に着替えるため――――瀬名さまとお話をするために――――。