純粋な愛

翌日


昨夜、君はやっぱり
星もみないで寝てしまった



でも、それもきっと今日で最後




君はこんな日に限って
梅干し入りのお茶漬け



僕は朝食を素早く済ますと
君がいつも電話していた部屋に逃げ込んだ



君は僕が梅干しが苦手なことに
気付いているみたいで
最近は苦笑いをみせる



そして、天気予報を見ながら
身支度を始めた


良かった
今日は鼻歌つきだから
機嫌が良い




やがて、君が僕を探し始める




もう僕が隣の部屋に
逃げ込んでいるのがわかってたみたいで
君はすぐ僕を見つけた




そして、頭を一撫でして






__行ってくるね。




そう言って僕から離れた





僕は君を追いかけて
重い扉の前まで行った



君が機嫌が良いのは知っていたから
予想通り僕が外に出るまで
君は待っていてくれた


僕は君と扉の前で別れてから
ハナヤに行こうと思っていた足を止めた



まだ、ハナヤに行くには早すぎる



君には花が元気な時に
渡さなくちゃ意味がないから



花のことを
教えてくれたのも君だ



花が綺麗なのは
その後枯れるからなんだって


花が種を残すのは
また綺麗になりたいからなんだって



一番綺麗な時が
一番元気なんだって



放って置いたら枯れちゃうから
買ったらすぐ渡すのが良いらしい



これを教えてくれたのは
ハナヤの店員さん




僕のいつもの散歩コース


最初は君と僕が一緒に住んでる箱を
ひとまわりする


箱は、最初に思っていたよりも大きいから
軽い運動になる


最近はずっと
外に出ていなかったから
刺激的な草の匂いを思い切りかぐ



…むせた



今度はゆっくりと吸った


心地いい



君が僕を抱きかかえ
温もりを与えてくれた日を思い出す


あの日から僕は
君に与えてもらうことばかりで


僕がなにかを与えることは
できていなかったと思う


だから今、君が最初に与えてくれた
温もりというものを
僕も君に、与えたいと思った


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