純粋な愛
それにしても
本当に今日は風が冷たい
こういう日は
あの赤い爪の
ギラギラした手でも良いから
温もりが恋しくなる
それからちょっと思う
どうして僕は
ここの暮らしの記憶から
始まらなかったのだろう、と
ギラギラした手でも
僕は温もりを
知ってしまった
そして
温もりを求めている
自分を
知ってしまった
ここで
タオルにすら
温もりを求めている自分に
最近は
腹が立つようになった
良いんだ
僕は
ひとりで生きてやる
ひとりでたくましく生きて
生き抜いてみせるんだ
__ヌクモリナンテ
イラナイ
そして眠りに
つこうとした時に
君に出会ったんだよ
びっくりしたよ
いきなり雨が
止んでしまうから
君のピンクの折り畳み式の
傘のおかげで
僕の寝床に
雨が降らなくなった
それで
僕を一撫でして
君は言った
__家に、おいで。
ああ、もう
今棄ててしまおうと
思っていたのに
君に期待していいの?
求めてもいいのかい?
タオルも要らなくなるのかい?
君は僕を慎重に
抱き上げた
僕はちょっと暴れたけど
渾身のパンチも
やっぱりヒトには
効かないみたいだった
君がやんちゃ坊主、と
嬉しそうに
笑ったりするもんだから
僕は暴れるのを止めた
僕はついに
寝床とタオルをすてた
その日から君と
暮らすことにした
君の手が
かつて経験した
温もりよりも
ずっとあたたかだったのが
決め手だった