初めては幼なじみ(真樹サイド)~手のかかる転校生~
「へえ。手、器用なんだね」
綺麗に切りそろえられた爪先で、フェルト生地を撫でる。
「器用じゃないけど、作るのが好きかな」
「ううん。上手く出来てる」
そう言って携帯を返してくれた。
「同じの作って上げようか?」
「いいの?」
驚いたように目を見開いて光輝がわたしの顔を窺う。
「うん」
「じゃあ、お願いしようかな」
そう言ってカバンの中から次の授業の教科書を取り出し、机の上に並べ始めた。
まるで定規を使って引いたような綺麗な横顔。
二月の乾いた日差しを浴びてわたしの目に飛び込んできた。
クラス内でもカッコイイと思う男子生徒はいた。
いたにはいたが、それはさっき噴射されたミストのように消えた。
この時から、隣に座った転校生が、一人切りのこの席が大のお気に入りだったわたしの日常を大きく変え始めた。