初めては幼なじみ(真樹サイド)~手のかかる転校生~
わたしのセーラー服の端を掴んでバックネット裏から少し離れた場所へと連れ出して来た。
突然のことで驚いた。
そして、小声で呟いて来た。
「ねえ。この中学の野球部っていつもこんなに部外者に注目されているの?」
「はあ?そんなことあるはずないじゃない。みんな、青木君を見に来てるんだよ」
「そんな感じはしてたんだけど、まさか校長や教頭とかさ……異常だよ」
その長身からは似合わないような弱気な発言だった。
「野球とかサッカーって特別注目されるからじゃない」
「あの、悪いんだけど……ごめん。名前誰だっけ?」
「黒川真樹」
「じゃっ真樹ちゃん。監督の集合掛るまで一緒にいてよ。俺が動く度に視線が纏わりついてどんな顔していいか分かんないし」
注目を浴びる人間は、注目されたくない人間だったようだ。