初めては幼なじみ(真樹サイド)~手のかかる転校生~
次の日
「青木君、噂通りだね。わたし、野球のことなんか知らないけど凄いってのがよくわかったよ」
夕べ徹夜で作ったストラップを光輝の机の上にさり気なく置きながらそう話しかけた。
疲れたように机の上にとっぷしていた光輝が、ストラップに目を向けて起き上がる。
「え? もう作ってくれたの?」
「うん」
「ヤッター。早速付けとこ。ありがとね。真樹ちゃん」
こちらを向いてまた、秒殺スマイルを浮かべたので、すかさず視線を逸らして
「あのさ。わたし、真樹ちゃんって呼ばれるの、あまり好きじゃないんだけど」
「そうなの? じゃあ、黒川さん?」
「その名字も好きじゃないし……黒とか暗い気がするから」
「何それ……俺も青木光輝って何か早口言葉みたいで嫌いだけどね。まあ、最近変わったばっかだけど」
最近変わったばっか?
「名前……変わったの?」
「うん。ほら、よくあるでしょ。親の離婚ってやつ」
光輝が無表情で、ストラップの紐に指先を通しクルクルと回す。