恋愛野獣会
―桜子―


携帯電話が鳴り始めたのはちょうどつまらない授業の最中。



わたくし、幼い頃から学業には長けていましたのでどの授業も退屈で退屈で仕方がありませんでしたの。



だから、今回わたくしが『体調がおもわしくありませんので保健室に行きますわ』と、先生に嘘をついてまで教室を出たのは、ただのきまぐれ。




決してタケルからの電話が嬉しかったとか、そんなことじゃありませんの。



息を切らしながら階段を上って、誰もこない踊り場へと出る。



呼吸を整えてから、電話に出た。



「も、も、もしもし!?」



声がクルリと裏返る。



―もしもし、桜子さんですか?―



丁寧な挨拶をするその声に、ドキッとする。



タケルからの電話はこれが始めて。



いつもはわたくしの用事があるときだけ、わたくしから連絡を取っていましたの。



「どうなさいましたの?」



いつもの嫌味さえ忘れて、素直にそう訊ねてしまう。
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