恋愛野獣会
ユカさんと吟
白夜先輩にそっくりな吟さんに手を引かれて、私は街の中を歩き回っていた。



「どこに行くの?」



「まだ、秘密」



さっきからそればっかりだ。



どんどん見慣れた街並みから、見た事もない細い路地へと入っていく。



それでも私の中に恐怖心がなかなか芽生えなかったのは、やっぱりこの人が白夜先輩に似ているからだったのだろうと思う。



「ここ、どこ?」



そして、ようやく吟さんが立ち止まったのは古びたアパートの前だった。



今ではもう使われなくなって廃墟になっているみたい。



「俺の思い出の場所」



「思い出の場所……?」



ニコッと微笑む吟さん。



「さぁ、行こう」



握っていた手に更に力を込めて、その中へと入っていく。



アパートの中はヒンヤリと冷たくてカビ臭い。




「ねぇ、ここなに? どうしてこんな所に……」
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