恋愛野獣会
その質問にも答えずに、狭い階段を上っていく。



廊下にはピンクチラシが散らばっていて、歩くたびにそれがカサカサと音を立てた。



そして……2階の一番奥の部屋で、吟さんは立ち止まった。



「ここだよ」



錆びたドアがキシミながら開く。



その瞬間、初めて恐怖が背中を走った。



小さくて薄暗い部屋。



ボロボロのレースのカーテン。



所々黒く腐敗した畳。



そしてなにより……異様な空気。



ドアを開けた瞬間感じた息苦しさと鳥肌。



「やだ……」



入りたくない。



そう言って首を振る私の背中を、吟さんは突き飛ばしたのだ。



「いや!!」



小さな玄関に倒れこみ、振り返ると同時にドアが大きな音を立てて閉まった。
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