フラワーデイズ

「あ」
「覚えててくれた?嬉しいな。実はいまからお店に行こうと思ってたんだよ」

 私と同じ高さに立った男はやはり背が高かった。名前はたしか…。

「今日は仕事早かったんだね。もう少しで行き違いだった。ここで会えてよかったよ。なんか運命感じるなぁ」
「はぁ…」

 一人で喋っている男の声を聞き流しながら私は夕べ彼が名乗っていた名前を思い出そうとしていたが、残念ながら覚えていなかった。

 客の名前なんて伝票に記載でもしなければ常連以外覚えていない。ましてや一度しか来たことのない客の名前なんて覚えていなくても仕方ないことだ。

「あの、何か用ですか」

 名前を思い出すのは諦めて私は男に尋ねた。できれば早くここを立ち去りたかったけど、客とあっては無視するわけにもいかない。

「実はユウキちゃんにお願いがあって」
「お願い、ですか」

 戸惑いながら尋ねると男は深く頷く。


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