フラワーデイズ

「どう?いまから帰るなら時間はあるでしょ。これから買い物付き合ってくれない?」
「お断りします」

 こればかりはさすがに即答だった。いくらなんでも怪しすぎるだろう。こんな得体の知れない変な男にノコノコ付いていくほどに私は間抜けじゃないのだ。

「なんで?お礼に夕飯ご馳走するし」
「余計に嫌です」
「えー」
「失礼します…ッて」

 地面を蹴って歩き出そうとした私の手首をその男は巧妙に捕まえていて私は思わず睨みつけた。

「何するんですかっ」

 それはギリギリの声だ。これ以上大きな声を出せば騒ぎになるという意思表示でもある。店の近所で騒ぎになりたくはない私の最大限の譲歩ということだ。

「花がかわいそうだと思わない?」

 その絶妙な言葉に私は絶句してしまった。


< 21 / 31 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop