フラワーデイズ


 花屋で働いている以上、花は好きだ。

 買ってしまえば客のものだと分かっていても、店を出て行く客が花束を乱雑に扱っていればかわいそうだと思ってしまうし、逆に大切にしてくれていると知れば嬉しくなる。

 それが自分の作った花束ならなおさらだから、その男の言葉はつまり殺し文句に近いといえた。

 黙って睨みつけた私をその男は自信に溢れた顔で見下ろしている。


「花ってちゃんと飾らないとすぐ枯れちゃうんだろ?もう一日経ってるからあの状況じゃあとどれくらい持つのかな」

 ダメ押しのように畳み掛ける。

「今の時期なら三日は持ちますから」
「あのままで?半分くらいはみ出てるけど」

 写真の鍋は特別に大きいと言うわけではないから花束の高さの途中までしか支えられていない。それだけじゃなく、そもそもラッピングのまま突っ込んであるからセロファンが花びらに触れてあちこち傷んでしまうのも目に見えていた。
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