フラワーデイズ
「自分が変なこと言ってるってわかってるんですか」
「君が変だと思ってるんだろうなって話だよ。僕は変なことは言ってないからね」
「は?」
混乱する頭を整理してみるけど、それでも何もわからない。どう考えても目の前の男はおかしかった。
「あとさ。僕の名前覚えてないでしょ?けっこう薄情だね」
「なんでそんな」
「じゃあ覚えてる?」
思わず言葉に詰まると男は笑った。
「それはまぁ仕方ないか。僕の名前はケイだよ。花瓶のことは諦めるけど、今度こそ名前は覚えてよ。記憶の隅にでも置いといて」
そういうと男は一歩階段を下りて私とすれ違う。急に歩き出したことを不思議に思うと通行人が後ろからやってくるところだった。
「今日は諦めるけどまたお店に行くから。昨日と同じ曜日ならあの時間にいるよね?じゃあね」
そうして男は帽子を被ると一段抜かしで階段を下りていく。