誠の桜に止まる蝶~番外編~
「私は席を外すね。」

沙織が苦笑いでその場を去ろうとする。

「いや、いなくならなく全然・・・」

「見え透いた嘘なんてつかなくていいよ?」

私の声を遮り沙織がまっすぐとこちらを見る。

そしてくるりと背を向ける。

「おいっ!沙織!!」

原田さんが沙織を呼び止める。

「なに?」

すこし不機嫌気味にこちらを振り向く。

「お前そんな言い方はないだろ?」

そういった声には沙織を諭す響きと心配する響きが混じっていた。

「原田さんに関係ないもん。」

拗ねたようにつぶやき、目をそらす。

「お前なあ・・・子供じゃないんだから。」

「子供のままがよかった。」

ぽつんとつぶやいたその響きは寂しさが含まれていた。

そして沙織はまた背を向けて扉まですたすた歩いていく。

「おい。沙織。」

「なに土方さん?」

「お前いつから俺らのこと苗字で呼ぶようになったんだよ。」

その声には寂しさを感じさせた。

「・・・最初から。」

そう言って微笑んだ沙織はまるで泣いているかのようだった。

そして出ていった。
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