誠の桜に止まる蝶~番外編~
「蝶っ!ちょっと一緒に総司と私の部屋来てくれない?」

「えっ!!いいけど・・・」

「ごめんね、待ってるから!!」

そう言って沙織は走って行ってしまった。

「沙織?」

私は扉から声をかける。

「あ、いいよ!入ってきて!!」

沙織の声を聴き扉を開ける。

「うわあっ!!」

私はおもわず声を上げる。

沙織は今まで来ていた淡いピンク色の着物ではなく、能を舞う白拍子の恰好に似た神秘的な衣装に身を包んでいた。

「沙織その恰好は?」

総司が驚いたように尋ねる。

「これは神無月家当主の正装よ。2人に案内してもらって、土方さんに直々に神無月家当主として頼もうと思って。」


「そこまでしていきたいの?」

私はきょとんと尋ねる。

「・・・思い出を作っておきたいの。」

「思い出?」

総司が不思議そうに尋ねる。

「うん。私、もしかしたらここに来れるの最後かもしれないからさ。」

すこし寂しそうに微笑む。

「どうして?!」

「・・・・私、もしかしたら結婚するかもしれないの。」

「「え?」」

わたしと総司の声が重なる。

「ふふっ。驚かないで?私はもう16。そろそろ結婚しなければならないのよ。本当は昔から許婚がいたの。だけど・・・」

「だけど?」

私が言葉の続きを促す。

「好きな人がいたから。どうしても、あきらめきれなかったの。あのころは子供だったけど今なら・・・そう思っておじい様の反対を押し切ってここにきたのよ。条件付きでね。」

「条件?」

私がつぶやくと沙織はゆっくりと頷く。

「私がもし、その好きな人と両想いになれなければ、帰ったら結婚するっていう条件。本当はおじい様は今すぐ私を結婚させたいんだけど、龍王が止めてくれたの。」

「そんな・・・」

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