誠の桜に止まる蝶~番外編~
「私は当主だもの。仕方がないの。だけど、だけどね?どうしてもこの恋はあきらめたくなかったの・・・」

涙をこぼしながら言葉を紡ぐ。

「沙織・・・」

「それに結婚したら自由が利かなくなるわ。みんなとも会えなくなる・・・そんなの嫌だったのよ。だから、無理をしてきたの・・・」

「沙織の好きな人って?」

総司が優しく尋ねる。

「・・・・佐之さん・・・」

沙織は消え入りそうにつぶやく。

「えっ?」

私はおもわず声をあげる。

「初めて出会った時から好きだったの・・・だけど私は子供で、彼は大人。だから今までずっと待ってたの・・・」

「じゃあ佐之さんに気持ち伝えればいいじゃないっ!!」

私はもどかしくて叫ぶ。

両思いなのに・・・

気持ちが伝わらないなんて歯がゆい。

だけど沙織は首を横に振る。

「だめなの。私からはいえない。」

「どうして?」

「私から気持ちを伝えるってことは、神無月家の運命を背負わせることになるのよ。そんなことできない。」

「そんな・・・・」

「暗くしてごめんね。でも、いいの。最後に思い出を作れればそれで。」

沙織は切なげに笑う。

「沙織・・・」

私はどうしようもできなくてただ、言葉をつぶやく。

「左之さんが一人の女性に本気にならないのは昔から知ってるもん。私も厄介な人好きになっちゃったなあー」

そう言って無理やり明るく笑う。

「さ、暗い話はここまでっ!お願いだから歳三の部屋に私を客人として案内してくれない?」

「うん・・・」

私はそう言って沙織を誘導する。
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