誠の桜に止まる蝶~番外編~
「土方さん、お客様をお連れしました。」

私は土方さんの部屋の前で声をかける。

「客?今日はそんな予定ねえんだけどな・・・」

中から不思議そうな声が漏れる。

「土方さんこんな美人なお客さんを待たせるなんてダメだなあ」

そう言って総司はがらりと扉を開ける。

「総司てめっ!って沙織お前・・・」

土方さんは沙織の恰好を見てあっけにとられる。

無理もない。

沙織は衣装と当主としての厳格のせいか、今までにないくらい美貌と神秘さを兼ね揃えているからだ。

そして土方さんの部屋にいた原田さんは驚きすぎて声にならないらしい。

「新撰組副長、土方歳三様に神無月家当主としてお願いがあって参りました。わたくしを今日の夜の巡察にお供させていただけませんか?」

そう言って丁寧に膝をつき頭を下げる。

「っばか!頭なんて簡単に下げるんじゃねえ!!」

そう言って土方さんは慌てて沙織の体を持ち上げる。

「では私を夜の巡察に連れて行ってくださいます?」

にっこりと目を見て微笑む。

「ったく断れるわけねえじゃねえか・・・総司たちが案内している時点で完璧な客人だ。神無月家当主様のお願いを俺らが断れないのをうまく使いやがって。」

土方さんは少し苦笑いを浮かべる。

「だって歳三も左之さんも認めてくれないんだもん。最終手段つかっちゃった♪」

「はあ・・・今日の巡察は大変なことになりそうだなこりゃ・・・」

そう言って土方さんはため息をついた。

「おいおい土方さん負けちまったのか?」

なりゆきを見守っていた原田さんも苦笑いで立ち上がる。

「仕方がねえか。俺らは昔から沙織に負けっぱなしだからなあ・・・」

そう言って原田さんは土方さんの手から沙織をひょいっと取り上げる。

「なっ!私はものじゃないんだから!!」

「はいはいお姫様。土方さん、俺はこいつにちょっと夜の巡察について教えてくるわ。」

そのまま原田さんは沙織をお姫様抱っこして連れて行った。

「珍しいな。原田が自分から言い出すなんて。取りあえず夜の巡察の準備するか・・・」

そう言って土方さんは体を伸ばす。

「土方さん、あの・・・」

「なんだ?」

「沙織についてなんです。」

「沙織について?」

そうして私はさっきの沙織とのやりとりを土方さんに話した。
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