誠の桜に止まる蝶~番外編~
「左之さんどこに行くの?」

沙織は不思議そうにつぶやく。

「ここだ。」

そういって俺は立ち止まる。

「うわあ・・・・ここって・・・」

「俺らがお前と出会った場所だ。」

目の前にはみごとな桜の木。

そう。俺らは8年前にここで沙織と出会った。

あのときは俺らはまだ名もない集まりだった。

近くの川で稽古を終えて歩いているとここに沙織と龍王が立っていた。

「あのとき私結構ひどかったよね。」

そう言って沙織は苦笑いをこぼす。

「ああ。いきなり俺らに向かって弱いってぼそっと吐き捨ててくるんだもんなあ。土方さんでさえ目を丸くしてたよ。」

「あははっ!だってあの時みんなまだ弱かったもん!!だけど、強くなったんだね。」

そうつぶやくとふわりと風が桜を散らす。

「ああ。・・・沙織、結婚するのか?」

俺の言葉に驚いてこちらを振り返る。

「・・・うん。そうだよ。」

「お前はいま幸せなのか?」

俺はそっと尋ねる。

もし、お前が幸せならそれでいい。

だけどそうじゃなかったら俺は・・・・

沙織はうつむいてしばらく黙る。

そして勢いよく顔を上げて桜を見ながら言う。

「うんっ!左之さんと桜みれたから幸せっ!」

そう言って俺に背を向ける。

その肩はかすかに震えていた。
< 129 / 166 >

この作品をシェア

pagetop