誠の桜に止まる蝶~番外編~
俺はおもわず後ろから強く沙織を抱きしめる。

「さ、のさ・・?」

沙織が驚いたように声を上げる。

その頬には綺麗な雫が伝っていた。

「好きだ。」

「え?」

「お前のことが好きなんだ。お前の好きな奴はきっと俺じゃねえだろうけど・・・俺はお前が好きだ。だから、結婚なんてするな。」

そう言って沙織の肩におでこをつける。

「ほ、本当に?」

振るえた声で尋ねてくる。

「ああ。俺もまさか一人の女に本気になるなんて思ってなかったんだが、どうやらお前に本気みたいだ。」

「っうれしいっ!!」

沙織はかすれるようにつぶやく。

俺はおもわず腕を離し、沙織の顔を見る。

涙に濡れた瞳はきらきらと星空のように輝いていた。

「いま沙織うれしいって・・・」

そう俺が言った瞬間沙織は俺に抱きつく。

「・・・私も左之さんが好き・・・・」

「え?」

「ずうっとずうっと左之さんが好きだったの。だから、すごいうれしい・・・」

そう言って俺の胸におでこをつける沙織。

そんな姿がたまらなくいとおしい。

俺は沙織をそっと抱きしめる。

「だけど沙織はこんな俺でいいのか?」

「左之さんがいいのっ!左之さんこそ私でいいの?」

「ああ。お前意外の女なんていらねえよ。」

「本当?遊び人って言われてた左之さんが?」

すこし不安げにこちらを見つめてくる。
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