誠の桜に止まる蝶~番外編~
「蝶・・・」

蝶が意識を失ってからもう早4日が経過する。

俺はずっと蝶の傍で看病しているが一向に起きる気配がない。

そして、沙織は4日間一睡もせずに蝶の傍で手を握っている。

それは蝶の体が食事を一切取っていないからこうして沙織の霊力を送っている。

「総司。気持ちはわかるわ。だけどもうあなたは休みなさい。」

「蝶が目覚めるまでここにいる。」

そんな俺の態度を見て沙織はふっと笑う。

「心配性ね。だけど、あなたのそんな姿見たら蝶はどう思うのかしら?」

「え?」

沙織はすっと真顔になる。

その顔はあの俺らに新撰組の名をさずけた時と同じものだった。

「あなたは新撰組一番隊隊長、沖田総司よ。いかなる時も冷静な判断をなさい。」

「沙織・・・・」

すっと襖があき、土方さんと一君と原田さんが入ってくる。

「まったく、さっきは新八と平助が覗きにきたとおもったら今度はあなたたち?」

沙織は苦笑いでつぶやく。

土「俺らだって蝶が心配なんだよ。」

原「それより、沙織お前一睡もしてないんだろ?顔色が悪いぞ?」

左之さんが心配そうに沙織を気遣う。

そして俺はハッとする。

確かに休息を取っていた俺と違い沙織は一度も休んでいない。

そんな沙織を気遣う余裕すらなかった自分に苦い思いがあふれる。

沙「大丈夫。それよりもうすぐ蝶は起きるわ。」

総「えっ?」

沙「蝶はね、今あなたたちの過去に行っているのよ。」

一「俺らの過去に?」

沙「うん。もうすぐ戻ってくるから。だからみんなは休みなさい。」

そう言って沙織は穏やかに微笑む。

だけどその微笑みは今にも消えそうなほどに疲れていた。
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